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実証実験結果レポート

--Mailだけでの計画の進行はどこまで可能か?--

・試験期間:6月から10月(5ヶ月間)
・目的  :イベントの計画(実施10月)
・スタッフ  有志10数名(中部地区各県)

 最初、計画の進行にあたり、MailのC.C.(カーボン・コピー)を使い全員で
Mailing-List風に始まる。
この段階で責任者Aが主体で始まる。具体的方針等は責任者Aの頭の中にあり、
細部まで公表はしていない。

ここで、スタッフの知識にはハイレベルの者から初心者に近い者まで多数である。
知識量に差があることで、初心者に近いものの発言は、ほぼ無い。
ブレーン・ストーミングを考えると初心者の意見も欲しいところであるが、
”引っ張って行ってもらう”、”誰かが引っ張って行くだろう”という考えが
あると推測する。
本来10数名のMLであるが、発言者は4,5名が主体になる(αグループとする)。
発言者は未発言者(βグループとする)が読んでいるのかさえ認識できない。
結果として、二つのパターンに移行していく。
1.発言者だけで物事が決まって行く。
2.進行自体がストップする。

2.はもちろん計画の進行には致命的である。
ただし、1.の場合でも難点が起きた。

未発言者が読んでいて黙認している場合は問題ないが、αグループで決定を
出した後にβグループの者が違う意見を出した場合。更に、その意見の方が
前の決定よりも良いプランであった場合、一旦決定した物を変更するかどうか
に問題が出てくる。

この後から出た意見は実は、1人の突然出した意見ではなく、MLとは別で個々に
DMで意見交換した後の意見と推測される。

その時点での状況は、
MLという共通の会話の場所があり全員に配信される大元があるが、個々のDM
で会話もなされ、その個々の会話の中で個人が「これはこうである。」といった
考えがなされるが個人としては理解していても、全体として計画に進行に進展
は少ない。

同時に計画の進行にあたって取り入れたシステムは掲示板である。
掲示板の中で会話されることもあるが、あまり長い文章が書き込めないため、
いわゆる連絡業務に使われるようになる。また、個人のサーバーで立上って
いない掲示板であるので、Logが増えると古い物からデータが消えて行く。

データの保存に関しては、フリーのソフト
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/5039/index.html
で対応をはかった。
しかし、全員が内容を確認している保証はない。

これまでの段階で、スタッフの立場・格付けは知識量等に限らず(有志で
あることから)対等・平等としてきたので、スタッフの中で格付けを行った。

10数名の内、5名を頭に立ててその5名で主だった計画をしていった。
5名の中のMLは発言の多い少ないはあるものの、5名全員の意見が交わされ
比較的スムーズに進行する。
区切りのラインは不確定であるが、会話の人数が多くなるに従い、幾つかの
グループに分けることが出来、一旦安定する傾向にある。

この5名を中心にトップダウン的に事の計画がなされてくが、
全員がこのトップダウンを受け入れるとは限らない。さまざまな意見が出て
くるのは必然である。
ただし、一方的なトップダウンでなく、下からの意見は聞き入れたが、直接
意見の届かない物、いわゆるどこどこで、だれだれがこんなことを言っていた
といった噂は完全に無視した。

全体的に言えることであるが、計画の進行にあたって、
「いつ・誰が・どういった発言をした」の記録は必要になってくる。
記録されることによって、発言数が減る危惧が考えられるが、実質10%減少
か又は、たいした意見ではないと判断した。
インターネットを利用した会話のシステムで、「ちゃっと」というものがある。
これは、複数人同時会話とも表現されるが、特にちゃっとで進展する傾向はみ
られなかった。逆に、インターネットの特徴であるが、慣れによって会話が
雑になる傾向がある。Mailでも同じ事が言えるので、例をあげてみる。

「それは、違うと思います。」
「そんなことは無いはず。」
「そんなことは無いはずだが。」
「そうでないのが、常識。」

一つの事を否定する文で、さまざまな表現がある。「常識・非常識」といった
言葉が出ると大概の人間はカンに触るはずである。
言葉に表情を表せることが出来る文才の持ち主はそう存在するわけではない。
対面してでの会話なら、相手の表情を確認しながら、コミュニケーションを
取りつつ会話出来るが、言葉だけの会話には十分注意が必要になってくる。
電話も前者に入る。言葉の抑揚で相手の判断を自然に行うからである。

実際に、いくつかのMLで顔を合わせたことの無いもの同士の会話で、喧嘩が
あることは最近では珍しい事ではない。しかし、会ってみたら以外に良い人
だったといった話も少なくない。

また、言葉だけでは表現しづらい事も多々ある。
これは、画像の添付によって補う事は出来るが、画像を加工しなければならない、
ベースの画像に書き込みをしたい、といったケースも多いと思われる。
多くの場合はgif形式のファイルであるならば、ほとんどの人がみることが可能
であるが、複数枚になると画像のデータの大きさを軽くする技術が必要になっ
てくる。同時に、画像加工ソフトが必要になる。
手間の問題では、1ヵ所に送るのなら、FAXが1番簡単な手法であるが、10箇所
への同時配信となると、Mailの添付ファイルと比較の対象になりうる。
再加工での返信を考えるとデータでの送信が有効的である。

ここでは、Mailを使用して複数人でのやりとり、掲示板の利用、ちゃっとの利用
画像ファイルでの補足についてレポートをあげたが、結論付けはしない事とする。

ただ全体として必要な事は、一方的な情報の伝達では事が進み難いということ
である。コミュニケーションは双方のやり取りによって回っていく。
一定の周期をもって、情報が伝達されているか確認する(確認したと連絡する)
ことは重要であるが、省かれ易い物である。

’00.08.19

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